以前、北欧Finlandの工場で私の製品をすべて制作していました。
その頃、出会ったフィンランドの学生のデザイナーについて少し話します。
15、6年前のある日の事、工場の事務所にいくと若い学生が私を待っていました、木工大学の5年生で卒業間近とのことで、聞くと私にデザインを見てもらいたいとのことで10枚程度の手描きのデザインスケッチを持参していました。
それはシェルフをデザインしたものでスケッチは上手で解りやすく1,2目を引くものがありましたが、私が驚いた事は10枚すべて明日にでも工場で作れるものでした。
後で聞いた話ですが私が来る前に1度工場に見学に来ていたそうで、サボンリンナ市からの要請で来ているらしく私がそのうちのどれかを採用すれば市から大学資金援助が出るとのことらしいことが後でわかりました。
フィンランドでは卒業間近の学生にメーカーに出向きこうした「腕試し」をよくさせるそうです。
そこで彼に聞きました。
「一度工場を見ただけ木工機器の加工限界や性能がわかるのか?」と聞いたら
「はい、わかります。大学では1,2年は機械整備から始まってひたすら木工作業の毎日で3年から職人コース、工場長コース、デザイナーコースに別れ勉強するため機械や技術的な事はだいたい分かっています」
この大学では一般工場の下請けや制作依頼をこなし一般の木工所ように仕事をうけて学校の運営資金に当てているそうです。
私はこの事を聞いて木工の国Finlandではデザインに関する考え方が日本とでは全く違うことにカルチャーショックを強く受けました。
まだ若く未熟とは言えこの学生こそデザイナーといえると感じ、この考えこそ正しいデザインでありデザイナーだと思うよになりました。
このショックはその後の私のデザインに関する考え方に今も大きく影響を与え続けています。
記述者ー三谷正昭
1953年3月大阪生まれ
歩くこと、サイクリング、 仕事
壁面にピッタリの本棚作り